「また会ったね」ー
時を超え、何度も巡り合う環と周。二人の物語は永遠に続く。
「環と周」は、名作漫画家・よしながふみが手掛けた最新作で、2025年の「このマンガがすごい!」オンナ部門第1位に輝いた話題作です。マーガレットコミックスから刊行された本作は、その斬新なストーリーテリングと深いキャラクター描写で多くの読者を魅了しています。今回は、気になるあらすじや登場人物たちの魅力をご紹介します。「環と周」をまだ読んだことがない方も、これから読みたいと思っている方も、このブログでその魅力に触れてみてください!
よしながふみ「環と周」作品紹介:多彩なキャラクターが織り成す物語
よしながふみ原作「環と周」は、1~5話+エピローグで構成された短編集形式で描かれた作品で、時代を超えた「環と周」の物語が織り成されています。
各話は異なる時代背景に設定され、それぞれの時代に生きる「環と周」が、複雑に絡み合う関係性を描きながら、人を思う気持ちを浮き彫りにしていきます。
1話目は「夫婦」、2話目は「女学生の友人」、3話目は「ご近所さん」、4話目は「部下と上司」、最終話は「仇」、そしてエピローグでまた「夫婦」。
それぞれの時代にいる「環と周」ですが、各時代ごとに年齢も性別もバラバラで、一話一話のお話はそこで完結しているのに、全話通じてつながりがある深い構成になっていて、これぞ輪廻転生という作品でした。
そして全話通してどの「環と周」にも、個々のバックストーリーがしっかりとあるので、そのキャラクターに引き込まれて、あっという間に読破できる、そんな読み応え抜群の作品となっております。
よしながふみ「環と周」オムニバス形式の魅力とは?
さて、「環と周」は、短編のオムニバス作品ですが、このオムニバス形式というのが、この作品をさらに面白い作りにしている要素だと、私は思います。
オムニバス形式の魅力は、異なるストーリーが一つの作品の中で展開されることで、多様な視点やテーマを一度に楽しめる点にあるのですが、特に「環と周」のように、時代や人物が異なるエピソードが織り交ぜられることで、読み手が一つのテーマや登場人物に囚われず、様々な世界観や感情を味わえるところが、たまらなくいい!!!
オムニバス形式だと、各話が独立しているので、どのエピソードからでも読み進めやすいところもグッドです。(ちなみに私は第2話が好きでリピート読みしてます。)
さらに、それぞれの物語が完結しつつ、全体として一つの大きなテーマを成すため、読後に残る感動や余韻がより深く感じられちゃうのもいいですよね。
「環と周」のようなオムニバス作品では、それぞれの時代背景やキャラクターの魅力がひとつずつ際立ち、違った視点から愛や人間関係を深く掘り下げることができます。
これにより、作品全体に対する理解が深まり、何度でも楽しむことができる点が、「環と周」の最大の魅力と言えるでしょう!!!
よしながふみ「環と周」ネタバレあり!第1話~最終話、そしてエピローグ
第1話 現代編
物語は、環が中学生の娘・朱里のキスシーンを目撃したところから始まります。
もうすでに衝撃的なのですが、朱里のキスの相手は女の子。環はその場を急いで離れ、家に帰ると夫の周にその出来事を報告します。
男の子じゃなくて女の子と、、、と、戸惑う環。しかし周はその事態に対して、他人事とは思えない感情を抱きます。
周自身、初恋相手は中学生の時の同級生であり男の子でした。当時はその思いをだれにも打ち明けられず、心の奥にしまったまま時が流れていったのですが、この過去が、朱里の気持ちに対する理解を深めるきっかけとなります。
周は、思いが通じ合った朱里に対して「すごいな」と、思わず感慨深くなります。
数日後、ふとしたことで環と朱里が口論となり、環は目撃したキスのことをぶちまけてしまいます。その翌日、朱里は学校に行ったまま帰ってこず、環と周は必死に探し回ります。
最終的に交番から連絡があり、朱里は無事に見つかります。環と周は二人で朱里を迎えに行き、河原を歩きながら三人仲良く帰るのですが、、、
そこで朱里が泣きながら、「小さい私のまんまでずーっとずーっと3人でいられたら良かったなあ・・・」とぽろり。
環は、「子供にあんなことを言わせてしまうなんて、自分は親失格だ」と落ち込みます。
「子供なんて毎日元気で笑っていてくれたらそれでいい、ううん、生きててさえくれればいいの・・・」環は、これからはそう思って朱里を見守り続けると固く誓います。
そんな環を抱きしめる周。
そして「ああ、、、僕はきっとこの腕の中にいる女性と死ぬまで一緒に生きていくんだ」と、家族としての愛と絆を確かなものにするのでした。
第2話 明治時代編
明治時代、女学校の同級生の「環と周」。周が運動会の徒競走に選ばれたことで、二人は仲良くなり、大切な「お友達」となります。
そんな折、周の縁談が決まり、二人は離れ離れになりますが、手紙で近況を知らせあい、交流を続けます。
24歳も年上のおとこやもめに嫁ぐことが決まった周。結婚に不安を抱えるものの式はつつがなく取り行われ、最初は新しい家になじめず泣き暮らしていた周でしたが、夫や義母の優しさに触れるうちに、頑張ってみようと思えるようになります。
環は環で、許嫁と結婚し、子宝にも恵まれ、手紙では元気にその様子を報告していました。
しかし、嫁いで二年たっても子供ができない周は、それを苦にし離縁を申し出ます。また、環に二人目の子供ができたと聞いて、やるせない気持ちから手紙を送ることができなくなります。
周と離縁する気はない夫は、養子をもらうことにし、周の負担を少しでも軽くしようとしてくれます。義母も床に臥せながらも周の心配をしてくれて、ホントいいところに嫁げてよかったね!!という感じです。
周の気持ちも上向きになり、また環に手紙を出すのですが、環からの返事はいつまでも来ず…心配になった周が環の家に行くと、環は半年前に流行り病で亡くなっていたのです。
帰り道、「素晴らしい方でしたの・・・ときどき思い出したりしないわ、ずっとずっと決して忘れない」と言い切った周。環を生涯の友とし、これからも生きていくのでしょうね。
第3話 70年代編
病気で余命わずかの環は、自分の住むアパートの大家さんに、自分の死んだ後のことをお願いします。環は仕事もやめ、残された時間を精一杯楽しんでいました。
そんなとき、アパートの庭で少年・周と出会います。
プリンひとつで泣き出す周を必死でなだめる環。周が床に寝転んで大泣きするシーンは、「あー、、、うちの子も昔こんなんだったっけ」と、子供あるあるを思い出してしまいました。
環はこれを「小さい子ってちょっと怪獣みたい」と笑っていましたね。
そして環と周の交流が始まります。一緒にプッチンプリンを食べたり、黒ひげ危機一髪をしたり、おやつを作ったり。
ある日、花火を一緒にしているとき、環は周の異変に気付きます。周の頭のたんこぶ・・・どうしたの?と聞くと、周は夢の中で本棚が倒れてきたと言います。これは何か重大なことが起きているのかも・・・
環が心配していると、周の母が訪ねてきます。「もう構わないで」という母親に戸惑う環。しばらく気にしないようにしていましたが、周が遠くで泣いているのを聞くとやっぱり気にせずにはいられません!
環は周の母に、周は病気ではないのかと問いただします。周は2歳ごろから原因不明の病にかかっており、母親は女手一つで周を育てながら、いっぱいいっぱいになっていました。
自分の先が短い環は、少しでも助けになりたいと、周親子のサポートをし始めます。
三か月後、周は入院するために引っ越していきました。
その翌日、環は部屋で倒れて、そのまま病院に運ばれて、それからしばらくして、病室で周が亡くなったことを知ったのです。
環は誓います。
おばちゃんが必ずあなたを見つけるよ、だから待っててね・・・と。
第4話 戦後編
時は戦後、復員兵の周は、首をつって死のうとしていたところを、元上官の環に見つかり助けられます。
戦地で死ぬこともできず、帰ってきたら娘は亡くなり、妻は男と夜逃げした。生きていてもしょうがないと泣く周に、環は喝を入れます。
環は闇市で商いをしており、周もしばらく手伝うことになったのでした。
ある日、闇市を取り仕切っている男が、コーヒー豆をもってきます。物はいいんだがさばくところがないというのです。
コーヒー豆を見て、目をキラキラさせる周。実は周は元喫茶店の店主で、コーヒーを入れるのは大得意。環と周の商いはそれはそれはうまくいきました。
そして周は環に、男と逃げたであろう妻のことを「あいつがどこかで元気でいてくれたら、もう俺はそれでいいや」と話します。
雨が降る中、店の準備を始めた二人。環は、「ちょっと顔出してくる」と言い残してその場を後にします。そこへ現れたのは、逃げたはずの周の妻・照子!
じつは環にかくまわれ、そのうちに親しい中になってしまったと・・・
客に出す用のピーナッツの袋の中には環の手紙が入っており、そこには環の思いの丈がしたためられていました。
最後に、照子さんとどうかお幸せに、と書いて結んだ環の手紙を見て、照子は「そんなの虫が良すぎる、あたしはもう一人でやっていくつもり…」と涙ぐみますが、周は環の人柄をしのび、照子の側にいることを決めます。
その後環には二度と会えなかったとのこと。環はどこをさすらっているのでしょうか。
最終話 江戸時代編
周の夫を斬ったのは、幼馴染の環。息子とともに仇討に来た周でしたが、悲願目前のところで息子が倒れ、亡くなってしまいます。
周自身も眼病を患い、自棄になって刀を振り回しているのを見て、環は「一緒に暮らせば俺の寝首をかけるかもしれぬ」と、国に帰れぬ周を引き留めます。
長屋で一緒に暮らし始めた環と周。
目が悪いなりにも家事をしようと奮闘する周に手を貸す環。美男美女の二人が並ぶと、まるで錦絵のようだと評されることも。
なぜ、夫を斬ったのかと問う周に、環は、実は先に斬りかかってきたのは斎藤様のほうなのだと話し始めます。
仕方なしに斬ってしまった環でしたが、そうなるまでに至ったことのいきさつを話せば周が世間のさらし者になると思い、国を捨てて逃げたとのこと。
自分を想ってくれた環を心から愛しいと思う周は、涙を流しながらその思いを訴えます。そして環もまた、昔から想い続けた周をその腕に抱きしめ、ふたりはやっと結ばれたのです。
しかし、仇討の相手を愛してしまった周はそんな自分が許せず、自害してしまいます。
「私はこの世に生まれてこない方が良かったのです・・・」
息絶えようとする周は、そんな言葉を口にします。
環は泣きながら、
「何度でも生まれて来い、どのような姿になっていても俺が必ずそなたを見つけ出す!!何度でもだ!生まれてこなければよかったなどとはもう二度と言わせぬ!!」
そう言って、冷たくなっていく周を抱きしめるのでした。
エピローグ そして現代へ
エピローグは再び現代に戻ります。
周の妹、香の結婚式の招待状が届いたところで幕が開けます。
朱里がふと、「そういえば、お父さんとお母さんはどうやって知り合ったの?」と尋ねると、環と周は顔を見合わせて、知り合った頃のエピソードを話していきます。
お互い、大学のころから知り合いではあるけど、そんなに親しくもなく、たまに飲む程度。何度も何度も会っているうちに、このあたりで付き合おうかとなったとのこと。
劇的でもロマンチックでもないけれど、と笑う二人に、「親の馴れ初めがやたらドラマチックでもなんか恥ずかしいし」と言う朱里に、「ハハハ、確かに」と和む環と周。
昔を振り返りながらエピローグは終わります。
よしながふみ「環と周」感想とまとめ
いや~、よしながふみの「環と周」面白かったです!
一話一話キャラが立ってて、しっかりストーリーも作りこまれていますし、それぞれ独立して面白いのに、さらにそれがつながっているのが本当に見事!!
最初は単発の話だけを楽しんでいたのですが、各お話の中に、次につながるフレーズが織り込まれているんですよね。
特に最終話の環の最後のセリフから、エピローグのラスト「また会ったね」につながった時、それまでバラバラなお話だと思っていた全話が、ぐわんと一つにまとまる感じ!!
江戸時代、結ばれなかった「環と周」が時を超え、世代を超え、性別を超えていろんな好きの形をつむぎだしていく・・・まさに珠玉のストーリーです。
単に愛情だけじゃなく、友情や家族愛と、形を変えてなお惹かれあう二人をたっぷりと堪能できました。
この記事を書きながらも何度も読み返したんですけど、何度も読んでいると、このシーン、輪廻転生を暗示するセリフが入ってるなーとか、いろいろ発見があって楽しいです。
「環と周」一度読んでみた!という方にも再読をお勧めできちゃうほど素晴らしい物語となっているので、まだお手に取られてない方はぜひ、読んでみてください!!
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